1992年、静かにヒットした
サム・サフィというフランス映画がありました。写真の男性は映画の中で、準主役のアメリカ人ピーターを演じたフィリップ・バートレットです。彼は日本に可能性を求めて来日し、友人の紹介により当店のオーナーと知り合い、オーナーの住居の一部屋に住むようになり、カフェでも働くようになりました。
日本語はできないけれどウェイターをするフィリップに、サインを求めるお客様もいました。彼は店内の柱にあるモザイクを作ったりもしました。その後、カフェのウェイトレスの一人と結婚し、フィリップはニューヨークに戻ることになりました。そして何か月か経った頃、フィリップから「何もできなかった僕に、住む場所と仕事を与えてくれて、心から感謝している。ありがとう。」という電話が入りました。その口ぶりをオーナーは不思議に思いました。それからしばらくして、マンハッタンのダウンタウンにあるチェルシーホテルが、フィリップの寝床になっていることを知っていたオーナーが、ニューヨークに行き彼の消息を尋ねました。そこで再会し近況を聞くのを楽しみにしていたオーナーは、思いがけずフィリップが亡くなっていた事を知りました。今でも柱のモザイクを見るたびに、オーナーはフィリップの面影とともに、懐かしい日々を思い出しています。